第三話:目覚め

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一番遅く出社して、一番早く帰る社長。

会社にいる時間だけが仕事ではないが、社員の手本とはならない。

そして、相変わらず、この会社ときたら人を交換の利く機械と思っている節がある。

人間である以上、仕事には感情が出る。

それが、作業効率に影響していることなど理解できず、効率よく仕事をしろと言うものだ

から、社員の気持ちはどんどん会社から離れていく。

景気も低迷ながら、オリンピックに向けて多少なりとも右肩上がりだと感じる。

しかし、一時の就職難一色から、働き方の定義が崩れ、自分らしい働き方というものがどん

どん広がっている。

日本がそういう環境にあって、もう少し景気が良くなれば、この会社を支えようとする社員

はどれだけいるのか?

きっと半分もいないだろう。

その時、この会社がたどる運命は1つだけ。

そんなことを考えながらも、目先の給料は大切で、何とか毎日のノルマをこなし、取引先や

部長に頭を下げる日々が続いている。

最近、底知れぬ自信が湧いてくる時がある。

頭ではなく、胸のあたりの奥底から、世間のそうしたノイズには左右されない・・・

何か、簡単に動かしようもないものが、僕の行動を支配するときがある。

頭で考える不安や恐怖、心配事・・・

そうしたものは、頭で考えているだけ。

しかし、考え続けていると、どんどんそれが成長して、不安で不安でたまらなくなる。

そして、それを頭で解決しようとするものだから、頭の中で考えることに拍車がかかる。

ついには、一歩もそこから抜け出せなくなってしまう。

以前は、こうした考えに囚われたとき、時間が忘れさせてくれることだけを必死に祈ってい

たものだけれど、今は違う。

そうした不安や思考の無限ループに落ち行ったとき、胸に手を当てて聴いてみる。

そうすると、心は何も思っていないことに気づかされる。

頭が勝手に作り出した不安であり、それに振り回される必要はないということが判るように

なった。

頭は、本当に気をつけなくてはいけないこと以外も、どんどん警告するようにできているよ

うだ。

それに気づいた僕の体には、本当の司令塔ができたようなもので、僕の行動は、心の動き

を大切にするように変わっていった。

思考がオーバーヒートしそうになると、胸に手を当て、心はどう思っているのかを聴いて

みる・・・大抵、何の返事もない・・・つまり、そんな思考はどうでもよいことだという返

答だ。

心との対話が、僕の体と志向を一体化していく。

いつしか、少しずつの変化が積み重なり、肉体と精神は半年前の僕とは大きく変わっていた。

あるとき、無性に人助けがしたくなり、照れ隠しの意味もありマスクを作ってみた。

余計目立ってしまうのだが、自分という素顔が隠れるので、目立ってしまっても全く平気だ。

手作りのマスクはひどいものだが、素顔や素性を隠せればクオリティはどうでもよかった。

これが、そのマスク。

少し前、かき氷を食べたときに、尋常ではないキーーーン!に襲われてから、自分が変わり

始めた気がする。自分の変化の原点は、かき氷のキーーーン!

それを忘れないように・・・「氷(アイス)」というイメージでマスクを自作した。

マスクには「氷」という文字を入れたが、どこかダサい。

まぁ、自分を隠せればよい。

これで、思う存分人助けができる。

・・・・ ”アイスマン” として。

しかし、”人間のコスプレ”というだけではない”力”が宿り始めていた。

マスクをかぶることによる、劇的な身体能力の変化!

僕自身が驚く身体能力・・・

それは、ある人助けで開花し始める。