「そういえば、あいつ、じっとしていたな。これから撃たれて殺されるというのに。」
そんなふうに思い出すのは、クマを射殺した猟友会メンバーの一人。
そこから想いを巡らせるのは、同じメンバーの人たち。
「もしかすると、子熊のころから育ててもらった恩返しをしたんじゃないか?」
「ひとり身の高齢の主人、身寄りもいなくて… そんなつらい未来を危惧して殺ったんじゃないか?」
「もしかすると、そうかもしれんね…」
飼っていたクマに襲われてご主人がなくなるというニュースが流れてきて、こんなことを思ってしまった。
「恩返し」と聞けば、複雑だがなんとなく美談になってしまう。
でも、それではダメなのだ!
どんなことがあっても「命」を他のものが奪ってはいけないのだ。
ところがどうだ?
自分はと言えば、手も汚さず、魚や豚や牛… 野菜… いろんな「命」をいただいている。
そういう時だけ、有難くいただくために手を合わせて「いただきます」と言う。
こんなカオス的な考えを巡らせて、人間で良かったと思う始末。
結論は出ない、生きていくのだから、完璧な結論とは、自分の死を意味する。
そういう割り切れないことは世の中たくさんある。
そのなかで、極力、他人に迷惑をかけず、できるだけ他人の立場や気持ちを理解しながら生きていくことしか、できないんだよなぁ。