金属を削るリューターというものは持っています。
手書きっぽい文字ならリューターで彫進めていくのも有りだと思います。
けれども、紙に印刷したフォントのように、綺麗な線で作られた焼印を押したいので、リューターで手彫りするのは無理だと判断しました。
世の中には便利な道具はたくさんあります。
高額な3Dフライスは、パソコンと連動させて、読み込んだデータを忠実に削ってくれます。
けれどもお金がかかりすぎてしまうため、私にはそうした道具を購入することはできません。
やっと見つけた方法が、真鍮をエッチング(腐食)させるという方法でした。
まったく初めて作るので手探り状態でしたが、ある程度の感触はつかめました。
このブログの通りにやれば、腐食による真鍮のエッチングはできると思います。薄い真鍮板であれば、基盤のようなものも作れると思います。
そろえるものはお金のかからないものばかりですので、ぜひ挑戦してみてください。
焼き印でなくてもいいという人は、ゴム印(消しゴムハンコ)でも良いと思います。
最近では、金属・革にスタンプできる特殊インクもあります。
曲線もきれいに出るし、材料費もうんと安いです。
消しゴムハンコも作ってみたので、併せてお読みください。
焼印が欲しい!
どら焼きでもパンケーキでも、木材や革にでも・・・ジューっとすれば、自分の名前やマークが押せたらいいなぁ!と思いまして、どうやらそれは「焼印」スタンプを自作すれば可能だという事が分かりました。
「焼印」はコンロなどで高温にしてから押すものですが、いちいち台所まで行ったり、ろうそくの火で熱くしたりするのは面倒です。
そこで、電気式のものにしようと思います。
コンセントプラグがあれば、どこでも「焼印」を熱くすることが出来ます。
押したいときにすぐ押せるのではないかと思います。
素朴な疑問
真鍮の「焼印」を熱する時、その熱で真鍮は溶けてしまわないのか?
今回、「焼印」は真鍮(しんちゅう)で作るので、真鍮について、金属の融解温度などを調べてみました。
真鍮の融解温度
真鍮は、「銅」と「亜鉛」の合金です。
銅と亜鉛の混合比によって融点は変わってきますが、一般的には融点は800℃前後と言われています。
電気式の場合「半田ごて」で加熱する
真鍮に「焼印」を彫り、完成した「焼印」を半田ごてに取り付けることで加熱します。
温度制御の無い半田ごての場合、コンセントを差し込んで放置しておけば、400℃を超えます。
結論:半田ごてで「焼印」を加熱しても「焼印」は溶けてなくならない。
「焼印」づくりの為の材料・道具
紙やすり
100円ショップなどで売られています。
1000番くらいの金属用のやすりが良いかと思います。
大抵、何枚かセットになって売られています。
そのセットの中に1000番以上のやすりが入っていれば、それを使います。
真鍮(しんちゅう)角棒
今回はネットショップの「Watch Your Step。」という文字を「焼印」にしたいので真鍮の角棒で 2cm x 2cm x 10cm ほどを用意しました。
少し大きすぎたかもしれません。2本購入して、送料込みで1,600円ほどです。
2本あれば、失敗しても大丈夫!最初に成功したなら、もう1本作る!
事前に1000番のやすりをかけておきます。
これにより、真鍮の面の油分を取り除くことができます。
また、やすりをかけることでトナーが転写しやすくなると思います。
お近くにホームセンターがなければ、楽天などで購入できます。
楽天の東急ハンズでも売っています。リンクを貼っておきます。
銅の丸棒
真鍮の角棒に穴をあけ、その穴にネジに溝をつけます。
その溝にこの丸棒を取り付けます。
銅にするのは、熱の伝導率が高いためです。
半田ごて
真鍮の角材に丸棒を取り付けると、真鍮のハンマー(金づち)みたいになります。
それを半田ごてに取り付けることで、半田ごての熱が丸棒と角材に伝わります。
程よく熱されたところで、革や木に押し付ければ「焼印」が付きます。
※100円均一のものは出力W(ワット)が低いのでおすすめできません。
アイロン
アイロンは真鍮にデザインを転写するときに使用します。
※スチーム機能は使いません。
用紙
富士カラーの通称”ぶどう”を用意します。
インクジェットプリンター用紙ですが、レーザープリンターで文字を印刷します。
転写紙の代わりとなるものですが、転写の成功率が高いと評判です。
印刷面の確認をして一番濃いめで印刷します。
一番濃いめで印刷したものを、さらに一番濃いめでコピーすると良いです。
また、コピー機の種類によってトナーの濃さが違うので何機種か試すと良いです。
普通紙で何度か印刷して、真鍮の大きさに合うようなサイズと字体を選びます。
そして、本番の印刷をするといいと思います。
うちのネットショップの屋号名「Watch Your Step。」と印刷してみました。
左右反転の印刷は必要ありません。
真鍮の大きさは、2cm x 2cm x 10cm。
「Watch Your Step。」は真鍮の長さ内で収まっています。
文字の高さも真鍮の幅(2cm)に収まっています。
文字に対して真鍮が大きすぎるので、熱の伝導率が悪く、焼印するまでの時間がかかるような気がしますが、まずは作ってみようと思います。
エッチング液
真鍮を漬けておくと、真鍮が溶けます。
使用後の液体は、勝手に捨てることができません。
ちゃんと説明書が書かれている通りに処理をして捨てます。
そうしないと、排水溝やトイレの金属パイプを溶かし大変な事態になります。
それらの説明書と安全に捨てるための材料がセットになっています。
そういうものを購入しておけば安心です。
楽天で送料とポイント付与を計算して、今のところ一番安く買えるお店を以下のURLとして貼っておきます。
サンハヤト [H-200A ] H-200A(エッチング液/200cc) H200A
マスキングテープ
真鍮をエッチング液に漬けることで真鍮が溶けるので、溶けてはいけない部分をマスキングテープでマスキングします。100円均一で購入。
その他
重曹、カップ焼きそばのトレー、割りばし、貼るカイロ、ハサミ、油性マジックetc。
使い方は、製作途中でご紹介させていただきました。
製作開始(刻印・焼印の作り方)
1. 真鍮に文字を転写する
多くのサイトを見て、いろいろ試しましたが、この方法が一番です!
熱する温度、アイロンがけのコツ・時間を参考にしてください。
レーザープリンターで出力した「Watch Your Step。」を真鍮に転写します。
以下のようにすると金属に文字を転写できます。
上記で紹介した紙にレーザープリンターで印刷すると金属に転写が出来てしまうから不思議!
(※印刷時は一番濃いめの設定で!転写がうまくいかない場合、トナーの成分に問題あり。プリンターを変えてみるとうまくいくと思います。)
紙に印刷する文字は反転する必要はありません。
印刷された文字面を真鍮に合わせます。
ずれないように押さえながら、水を含ませたティッシュで紙を濡らしていきます。
印刷されていない面の上からしみ込ませるように、丁寧にゆっくりと、たっぷりしみ込ませます。
一通り濡らしたところです。
ちなみに、めくってみましたが、この段階では印刷トナーが滲んだり、真鍮に写ったりはしていませんでした。
もう一度、湿らせながら綺麗に紙を戻したら、加熱したアイロンでプレスします。
加熱温度は「中」にします。「高」でも「低」でもありません。
厚手の木材や本を下に敷くとよいです。
アイロンのプレスはコツがあります。
実は、何度も何度も失敗をしています。
一番うまく言った方法は以下のようにプレスすることです。
① そっとアイロンを置く
絶対にアイロンを前後左右に動かさないように、そっと置いたら30秒くらいそのままじっとしています。ジュー!と音がすると思いますが、そのままです。
② 少し強めにプレスする
30秒くらい経過したら、そのままの状態で少し強めにアイロンを押し当てます。
まだ、時より、ジュー!と音がすると思います。
そのまま少し強めに40秒ほどアイロンを押し当てます。
そっとアイロンを置く + 少し強めにプレス = 約1分10秒
③ グリグリする
端の方から、もっと強めにアイロンを押し当てたら、グリグリと押し当てながら右から左へアイロンを少しずつずらしていきます。
敷いてある本または木材を180°回転させて、また右から左へグリグリ・・・。
左右まんべんなく、強い力でアイロンをグリグリと押し付けます。
この繰り返しを3から4分。
④ 水に入れる
真鍮はとても熱くなっているので、気をつけて水の中に入れます。
ジュー!と音がすると思います。
冷めるまで待ちます。
⑤ 紙を剥いでいきます
水に浸けたまま、ふやけた紙を剥いでいきます。
決して、紙をめくるように剥がないでください。
くっついている紙を指の腹で、そっと撫でます。
何度も何度も撫でると・・・ふやけた紙が少しずつボロボロと消しゴムのかすのように少しずつ剥がれてきます。
そっと、根気よく、紙くずが出なくなるまで繰り返します。
そうするとトナーの転写された部分以外の紙を綺麗に剥ぐことができます。
⑥ 一旦、水から取り出す
水から取り出して乾かすと、白い部分がすぐに目につきます。
これはとり切れていない紙ですので、水をつけて優しくなでるようにして綺麗に取ります。
⑦ 補修
丁寧に紙を剥ぎ取ってもトナーが剥がれてしまう部分がります。
おそらくアイロンがけの時、そこの部分だけプレスが足りなかったのだと思います。
こんな感じです。
「。(句読点)」と「Y」の文字の下の部分のトナーが剥げています。
こういう時は、油性のマジックで補修します。
はみ出さないようにきれいに塗ります。
いかがですか? きれいになったと思います。
これで、転写が完了しました。
調子に乗って、もうひとつ別のデザインの転写をしました。
このトナーで黒くなっている部分がマスキングとなります。
つまり、この部分は腐食せず残る部分です。他の部分は腐食されます。
このことで凸凹ができ、刻印・焼印となります。
いよいよ、次はエッチングの工程(腐食)です!
2. 真鍮をエッチングする
マスキング
文字として残る部分は、転写したトナーがマスキングを役割をしてくれます。
その他の面はマスキングテープでマスキングしないといけません。
マスキングを一回した状態ですが、念のため何重にもします。
印刷された面から1.5~2mmくらい下の部分に巻き付けます。
その目的は、1.5~2mmを腐食させたいからです。
文字とそうでない部分の凸と凹の高低が1.5~2mmないと、うまく刻印・焼印として機能しないと思います。逆に、それ以上の腐食は、腐食が進んだ文字の側面への腐食も進んでしまい、文字が欠けるなどの原因になりかねません。
※ 後に判ったのですが、腐食が0.2mm~くらいでも刻印・焼印が出来そうです。
ちょっと一工夫
マスキングをしながら、一工夫!
割りばしを通せるような「輪(わ)」を作ります。
※ 「輪」は金属ではダメです。金属だと溶けてしまいますので!
工夫の理由は、以下の写真の通りです。
こうすることで、無駄にエッチング液を使わずに済みますね!
食べ終わったカップ焼きそばのトレーを利用して、「輪」の部分に割りばしを通し、トレーの上にセットします。
真鍮の棒はトレーの底に付くか付かないかくらいの高さに調整します。
だいたい2mmくらいの隙間が空いています。
ここに、真鍮のマスキングされている部分とされていない部分の境まで、エッチング液を少しずつ注ぎ入れます。
詳しく説明すると・・・
マスキングはトナー印刷された面から1.5~2mmのところにあります。
その真鍮は、トレーの底から2mmくらいのところに吊り下げました。
つまり、トレーの底から足し算すると、
2mm + 1.5(2mm)= 3.5(4)mm
となります。
エッチング液は、3.5~4mm の高さまで注ぎ入れることになります。
エッチング開始
室温25℃のなか、エッチング液を湯煎することなく開始です。
13:30 エッチング液をトレーに入れたところです。
匂いはほとんど感じられず、液体の色はうがい薬のような感じです。
いろいろネットで検索すると、40℃くらいに保った方が良いとか書かれています。
これは、腐食のスピードを最大限引き出す温度であり、そうしないと腐食しないわけではありません。
溶けだした成分がトレーの下に溜まっていきます。
その成分が腐食面とトレーの底の間に溜まると、腐食のスピードが落ちます。
1時間に1回とかのペースでトレーを少し揺すってエッチング液をかくはんします。
18:00 4時間30経過。
すこしエッチング液をかくはんしながら匂いをかぐと、鉄の匂いがします。
腐食面を見てみると、ほんのわずかに文字以外の部分が凹んでいるような気がします。
22:00 0.1mmほどの腐食を確認。(8時間30分経過)
真鍮を引き上げ、エッチング液をそっとティッシュでふき取ると綺麗に腐食されています。
しかし、転写したトナーが剥がれている部分もあり、油性マジックで再び補修。
だいたい、0.1mmほどの腐食です。
2:00 一旦腐食を中断。(12時間30分経過)
さすがに眠くなり、就寝中に腐食が進みすぎるのが怖いので中断。
真鍮をエッチング液から引き揚げます。
8:00 腐食を再開。
引き上げられた真鍮の腐食を確認します。
腐食面を確認するとだいぶ腐食が進んでいるようですが、マスキングが剥げている部分もあり、油性マジックで補修の後、エッチング液に入れます。
ちなみに、エッチング液は取り換えていません。
どれくらいの凹凸ができれば刻印可能かを検索していたら、こんな画像を発見!
少し湿らせた革に100円玉をプレス機で押し付けると、このようになるそうです。
ということは、文字とそうでない部分の凸と凹の高低が1.5~2mmも必要ない!
0.2mmくらいでもいけるんじゃないかと思いました。
<ちなみに>
腐食による刻印・焼印作りは、文字や線の輪郭はギザギザになります。
※ 専用の機械で削れば輪郭はシャープです。
いくらアイロン転写が綺麗にできても、腐食させれば、輪郭はギザギザになります。
刻印は革に押しますが、文字の輪郭の精度は必要ありません。
上の例の100円玉の刻印くらいのシャープさで十分です。
焼印は木材などに押しますが、押された部分は焦げるので、どのみち文字の輪郭は”ぼやけ” ます。
これらを考慮に入れると、業者に注文して専用の機械で作っていただかなくても、腐食による作り方で十分だと思います。
10:00 腐食の進行度チェック。
朝から進んでいないように感じます。
エッチング液の入れ替えが必要なのかもしれません。
せっかく入れ替えるのだから、もうひと手間加えてみます。
トレーの下に貼るカイロを敷いてみました。
貼るカイロは最高温度64度、平均温度53度、持続時間約12時間(40度以上)らしいです。
エッチング液は45℃以上にしてはダメです。
しかし、今回のカイロの使用方法は、衣類の中に貼るわけではないので、さほど温度が上がらず、丁度よくなるのではないかと推測します。
エッチング液は温度が上がると腐食が良く進むらしいので楽しみです。
11:15 びっくり!腐食スピード格段にアップ!
これまでの時間は何だったのというくらい腐食が進んでいて、マスキングのトナーも油性マジックの補修では難しいくらいに剥げ落ちてしまいました。
これ以上の腐食は、文字の輪郭そのものをダメにすると判断しました。
それでも、油性マジックで補修し、あと15分だけ腐食します。
11:30 腐食完了。
エッチング液から取り出し、水に重曹をたっぷり入れたバケツに真鍮を入れます。
シュワー!っと泡が立ち、マスキングのトナーは剥がれてきます。
油性マジックは消えないので、激落ちくんのようなスポンジで軽くふいてやると落とせました。
出来上がり!
なんか思ったほど文字が浮き出ていないけれど、100円玉の浮彫くらいは彫れています。
マスキングしていないところとの段差は明らか!文字の淵もキレイです。
約1mm弱も腐食していたのか~。
試し押し「焼印」
半田ごてとのジョイントがまだですが、プライヤーで真鍮の棒をつかみ直火であぶってみ
ます。真鍮が熱せられ、焼印が押せるようになるまでの時間は、何度もあぶっては押してみるの繰り返しで、コツをつかみます。
ベニヤ板と紙に刻印を押してみました。
何度か押しているうちに、この辺を押さないと「。」がうまく出ないとか・・・
焼印のクセみたいなものを知ることができます。
焼印は、強く押さなくても焦げてくれます。
ただ、真鍮そのものの四角い輪郭も焼印されてしまいます。
この部分は、鉄やすりで丸めて落とそうと思います。
上の写真で例えると「紙」に焼印した左の「Watch Your Step。」ですが、文字のまわりが四角く縁どられています。これはデザインではなく、真鍮の輪郭です。
本来は文字だけが焼印されるデザインです。
こうならないためにも、真鍮の輪郭を鉄やすりをかけて角を取っておきます。
そうすれば、四角い縁取りは出てこなくなります。
焼印であれば、これくらいの腐食でも十分だということが分かりました。
マスキングはほぼ完ぺきでしたが、腐食してはいけない文字の部分が腐食したり・・・
文字の輪郭が欠けてしまっていたり・・・
そういうのは、焼印をしてみて初めて分かるものです。
焼印の押し方でその欠けた部分をカバーできる場合もありますが出来ない場合もあります。
腐食させているときに転写したトナーが剥がれ落ちることが原因です。
しかし、それはいつ剥がれ落ちるのか見当もつかないので、こまめに確認する必要があります。仮に5分おきに確認したとしても、その5分の間に剥がれ落ちる可能性もあり、完ぺきに対処するのは不可能のように思えます。
腐食による焼印作りはこれが限界かもしれないですね。
完璧な彫りをもとめるなら、機械での彫りしかありません。
当初、焼印と刻印を兼ねたものにしようと思いましたが、方向転換します。
今回のものは「焼印」専用とし、刻印は別の素材で作ります。
「半田ごて」に「焼印」をジョイントする
いちいちプライヤーでつかんでガスコンロであぶるのは大変です。
そのため、電気式の半田ごてとジョイントさせることで、電気をとれるところなら、どこでも焼印ができるようにしたいと思います。
この段階にきて、僕の熱が冷めてしまいました。
まぁ、プライヤーであぶればよいわけだし、そもそも今回の真鍮は厚みがありすぎます。
これでは、半田ごてにジョイントしても熱が伝わるまでに時間がかかりすぎるかも?
・・・・と、作業が進みません。
一旦、ここで終了して、次回、別の大きさで挑戦したいと思います。
真鍮の焼印が難しいならスタンプを作ろうと思いました!
こんなものも作っています。
・・・・オノマトペ。