アマゾン・ジャパンを反面教師に。

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忘れられない状況

いつでも、事あるごとに思い出し、腹の底から怒りが湧いてくる状況があります。
それは、私がアマゾン・ジャパンで働いていた時に上司が私に言った言葉です。

「早く、そうなってみたいね。」

当時、私は仕入れ価格の無理な交渉を強いられていました。

仕事でも、友達付き合いでもそうですが、

  • 欲しいものだけを欲しいだけ手に入れたい
  • そして、どこよりも安く買いたい

こんなことばかりを相手に要求していたら、いずれ誰も相手にはしてくれなくなります。

当時、私はゲームストアを担当していました。そんなゲーム業界の問屋からメーカーにまで無茶苦茶なことを要求を強いられていました。

日本のゲーム業界

ご存知のない方がほとんどだと思いますが、日本のゲーム業界は横のつながりと縦のつながりがしっかりしています。

一言でいえば「困っているときはお互いが助け合う」という精神が息づいています。
今となっては、そういう業界は珍しいのかもしれませんが、そういう環境だからこそ「ゲーム大国日本」が生まれたのだと思います。

鳴り物入りで上陸し、「ネットで一番販売しているのは、我々、アマゾン・ジャパン!たくさん売っているのだから、売れるものをもっとたくさん、もっと安く供給してください!」と突きつけるわけですから、古い業界にあっては拒否反応が起きないはずがありません。

そんなやり方に、私は、アマゾン・ジャパンの将来を危惧しました。
そして、ダイエーの倒産騒動時の教訓を上司に進言しました。

ダイエーの倒産(危機)

一昔前のダイエーの倒産騒動では、多くの会社、人が迷惑・被害をこうむりました。

当時のダイエーは、売れるものを大量に格安に仕入れるという営業方針でした。
1円でも安く仕入れられるのなら、長い取引と信用がある取引先を切り捨て、違う会社から仕入れるといった、利益追求だけの会社でした。

しかも、売れないものは一切仕入れない。売れ残ったら返品する。
返品ができなければ、仕入れ同様の価格でも売切ってしまおうとする会社でした。

私は、前職でダイエーのそんなやり方を見てきました。
そして、ダイエーの倒産騒動時には、私は、そこに「必然」性を感じました。

あれだけ大きな会社が倒産(危機)する…
当時、ダイエーと付き合いのある会社は、ダイエーに対して「助け船」を出しませんでした。

シビアな利益追求で泣かされた会社、明日は我が身という会社… いろいろありますが、金の切れ目は縁の切れ目とばかりに、ただただ、傍観していたものでした。

良い関係性があるかどうかが重要

もし、仕事上で良い関係を築けていたら、ダイエーがピンチと聞いて、安くて売れる目玉商品を優先的にダイエーに回す取引会社もあったことでしょう。そういうつながりは下支えとなり、ダイエーの倒産危機を未然に防いだかもしれません。

けれども、誰も手を差し伸べないという状況… それが、現実でした。
国が介入するという大ごととなり、大変多くの人たちが迷惑をかけられました。

私は、いざという時、お互いに助け合える関係性がビジネスの中心になければいけないと考えています。ダイエーの経営方針は、私とは真逆の考え方です。

当時のアマゾン・ジャパンは、そのダイエーと重なるような方針ばかりで、私は、会社の危機を遠くに感じていました。

所詮、表面的なパフォーマンスであった

そんなことを上司に伝えたとき… 「早く、そうなってみたいね。」という言葉が返ってきました。私のやる気が失せたことを覚えています。

さらに落胆したことは、あれだけアマゾン・ジャパンの発展を信じて疑わず、私の意見を一笑したその上司は、数年後に転職し…「出張板前」を開業していたということです。

あれだけの大口を叩いても、所詮、あれは上司のパフォーマンスだったということです。アマゾン・ジャパンという会社を、私より真剣には考えていなかったということです。

将来のアマゾン・ジャパンのためにどれだけ真剣に考えているかということと、会社内の役職は、必ずしも比例しないということが分かったとき、すべてが、馬鹿らしく思えました。

あの時の言葉… 最近、よく思い出します。

街を歩けば、1日1度はAmazonの段ボールごみを目にします。
すごいことをやっているようで、表面的なパフォーマンスばかりを立派に見せているだけの会社であることは、ほとんどの人は知りません。

最新のテクノロジー、派手さ、カッコよさ、芸能人の起用… 消費者には、素敵で夢のあるサービスを提供している会社だと映るかもしれません。それらは、全て表面的なパフォーマンスで、その裏で、苦しい思いをしている会社が少なくありません。

あの段ボールごみを見ると惨めな思いになるアマゾン・ジャパン出身者も多いのではないでしょうか。

反面教師として忘れない

売れるものをたくさん安く欲しい!という主張は、自分勝手なものです。

そうではなく、売れ残りそうなものも一緒に仕入れ、それをアマゾン・ジャパンの知恵と工夫で売切っていくという、相手の手助けをしながら関係性を詰めていくことで、売れる商品をより多く仕入れることができるのです。

自分ではなく、相手が喜ぶことをまず先にする!
少なくとも私は、そうした関係性を取引先と保ちたいと考えています。